バロックパールとは

・バロックパールとは
バロックパール(英語名:Baroque pearl)とは、対称軸をもたない不定形の真珠を総称
してバロックパールと呼びます。真珠の形は、ラウンドやセミラウンド、ドロップ(しず
く型)、ボタンなど形により名称がありますが、それら以外の不定形の真珠をバロックパ
ールと呼んでいます。また、不定形の度合いが少ない真珠をセミバロックパールと呼びま
す。
バロックの語源は、いびつな形を意味するポルトガル語のBarroccoやイタリア語の
Baroccoからきており、真珠(バロックパール)はもちろん、宝石(バロックストーン)に
も使われています。日本語での特有な呼名はなく、海外でもバロックと呼ばれており、不
定形の真珠をさす世界共通語になっています。また、芸術分野で使われるバロック様式と
いう言葉は、真珠のバロックから名付けられたという説が有力とされています。
バロックパールの特徴は、その形のユニークさです。多様な形を生かしたジュエリーに
仕立てられることが多く、オリジナリティ溢れるデザインが魅力の一つです。丸い真珠に
ない形に面白さがあり、カジュアルな普段使いはもちろん、お洒落な装いでも人気を集め
ています。
名称 |
バロックパール |
英語名 |
Baroque pearl |
誕生石 |
6月の誕生石 |
石言葉(パワーストーン) |
愛、純潔、富、誕生 |
記念日・贈り物 |
結婚30年目「真珠婚式」 二十歳「成人式祝」など |
ルースサイズ ※1 |
5mm~18mm (サイズは真珠の種類により異なる) |
※1ルースとは、真珠単体の呼名でジュエリーなどにセットされる前の真珠だけの状態をルースと呼びます。日本では俗に裸石と呼びます。
・バロックパールの種類
バロックパールは変形した真珠の総称のため、真珠貝により様々な種類があります。一般的には、白蝶真珠、黒蝶真珠、あこや真珠、淡水真珠、アワビ真珠の5種類があります。
バロックパールの種類 |
サイズ |
色 |
価格 |
白蝶真珠 |
8mm~20mm |
ホワイト系・ゴールド系等 |
中~高 |
黒蝶真珠 |
7mm~18mm |
ブラック系・グリーン系等 |
中~高 |
あこや真珠 |
3mm~10mm |
ホワイト系等 |
低~中 |
淡水真珠 |
3mm~15mm |
ホワイト系・パープル系・オレンジ系 |
低 |
アワビ真珠 |
3mm~15mm |
グリーン系・クリーム系など |
希少 |
<白蝶真珠のバロックパール>
白蝶真珠(読み方:シロチョウシンジュ/英語名:South Sea Pearl / 南洋真珠とも呼ばれる)のバロックパールは、主に2種類の色があります。白蝶真珠が育まれる真珠貝に、シルバーリップとゴールドリップがあり、シルバーリップからは大粒なホワイト色とシルバー色の真珠(白蝶真珠)が採取され、ゴールドリップからはゴールド色の真珠(ゴールデンパール)が採取されます。
白蝶真珠のバロックパールの特徴は、大粒な真珠が育まれることです。他の真珠と比較しても大きなサイズのものが採れ、一粒のネックレスで身に着けても、華やかな印象をあたえます。大きな真珠が採れる理由は、母貝となる白蝶貝(学名:Pinctada maxima)にあります。真珠貝の女王と称され、世界最大の真珠貝です。殻高が30㎝に達するものも存在し、真珠層が厚く滑らかなため、美しく上品なバロックパールをお選びいただけます。
<黒蝶真珠のバロックパール>
黒蝶真珠(読み方:クロチョウシンジュ/英語名:Black Pearl /ブラックパールや黒真珠とも呼ばれる)のバロックパールは、豊富なカラーバリエーションが楽しめる、近年人気のアイテムです。黒蝶真珠は、黒蝶貝(学名:Pinctada margaritifera)から採取される真珠のことで、フランチポリネシアのタヒチ島が市場の約95%の生産量を占めています。そのため、タヒチアンパールとも呼ばれることもあります。
黒蝶真珠のバロックパールの特徴は、ブラック系を中心に、グリーン、ブルー、グレー、ブラウン、レッド、など様々な色の真珠があることです。ブラック系やグリーン系の真珠はもちろん、近年は様々な色のルースを組み合わせたマルチカラーのネックレスなどが流行しています。また、ピーコックグリーンと呼ばれる色の真珠が価値が高く、孔雀の羽のように深みのある緑の地色(実体色)で、真珠の中心に見られる干渉色が赤い、とても美しい真珠です。サイズでは、小粒なものから大粒なものまで、多彩なバリエーションをお楽しみいただけます。
<あこや真珠のバロックパール>
あこや真珠(阿古屋真珠 英語名:Akoya Pearl)のバロックパールは、上品なホワイトカラーを中心に、小粒なバロックパールが取り揃うアイテムです。世界的に日本が産地として有名で、国産の代表的な真珠です。あこや真珠のバロックパールの特徴は、その小粒なサイズです。小さく可愛らしいため、バロックパールを揺れるピアスにしたり、シンプルなスタッドピアスしたり、複数のバロックパールを使ったブローチにするなど、豊富なデザインバリエーションが楽しめます。あこや真珠は、あこや貝(学名:Pinctada fucata martensii)から採取される真珠のことで、日本では愛媛県の宇和島、長崎県の壱岐・対馬、三重県の伊勢志摩が主な産地です。最近では中国やベトナム等でも養殖されていますが、日本産の真珠が世界で最も高く評価されています。
<淡水真珠のバロックパール>
淡水真珠(読み方:タンスイシンジュ/英語名:Freshwater Pearl)のバロックパールは、ホワイト系、パープル系、オレンジ系の3色があり、他の真珠と比較して安い価格でお求めいただけるアイテムです。
淡水真珠のバロックパールの特徴は、何と言ってもリーズナブルな値段が魅力です。また、小粒から大粒な真珠までサイズも様々で、珠数が多く必要なロングネックレスや、ステーションネックレスのジュエリーが人気です。また、淡水真珠以外の養殖真珠には中に核が入っていますが、淡水真珠は核がなく、真珠全てが真珠層で出来ていることも特徴の一つです。
淡水真珠は、ヒレイケチョウ貝(学名:Hyriopsis cumingii /中国産淡水真珠の母貝)とイケチョウ貝(学名:Hyriopsis schlegelii/日本産淡水真珠の母貝)等から採取される真珠のことで、国内では1980年代まで琵琶湖での養殖が盛んでしたが、現在では市場に流通している淡水真珠のほとんどが中国で養殖されています。また、他の真珠は海で取れますが、淡水真珠は、その名の通り湖や川で採れる真珠です。
<アワビ真珠のバロックパール>
アワビ真珠(英語名:Abalone Pearl)のバロックパールは、養殖では育まれず、全てが天然のバロックパールです。そのため、希少性がとても高く、市場に流通した場合は、とても高級な品になります。ボタン型や半球状のアワビ真珠が少量ですが日本でも養殖されていますが、バロックパールとなると偶然に発見された場合が多く、その価格も大変高価です。
アワビ真珠のバロックパールの特徴は、グリーンブルーの色が多く、虹色の干渉色が見られる美しい色合いです。形は平たく角があるものが多く、球形に近いものは大変稀です。
アワビ真珠は、アワビ貝(学名:Holiotis)から採取される真珠のことで、天然真珠はアメリカやニュージーランドで採れることがあり、養殖真珠は日本でも少量生産されています。
・バロックパールの産地
-真珠養殖をしている主な産地マップ-
<白蝶真珠・バロックパールの産地>
白蝶真珠の産地は、主にオーストラリア、インドネシアを中心に、フィリピン、ミャン
マー、タイで養殖されています。母貝となる白蝶貝は、海水温25℃~29℃の暖かな海域を
好み、西南太平洋地域に生息しています。白蝶真珠にはホワイト系とゴールド系の2種類
の色がありますが、地域により特色がありシルバーリップと呼ばれるホワイト系の白蝶真
珠はオーストラリアに、ゴールドリップと呼ばれるゴールド系の白蝶真珠は、フィリピン
とインドネシアに多く生息しています。またサイズ別では、オーストラリアでは比較的大
きな10mm~18mmの真珠が育まれます。中でも15mmを超えるサイズは特大サイズと言え
ます。一方、インドネシアでは8mm~13mmの真珠が養殖されています。
各国の主な養殖地域は下記の通りです。
・オーストラリア:西オーストラリア、ノーザン・テリトリーなど
・インドネシア :バリ島、西パプアなど
・フィリピン :サンボアンガなど
・ミャンマー :ラノーン、メェイ群島など
・タイ :プーケットなど
<黒蝶真珠・バロックパールの産地>
黒蝶真珠の産地は、フランチポリネシアのタヒチ島を中心に、フィジー、クック諸島、
そして日本でも養殖されています。母貝となる黒蝶貝は、暖かな海域のサンゴ礁でできた
ラグーン(環礁)など美しい海を好み、南太平洋地域に生息しています。主要な産地は、
南洋に位置するフレンチポリネシアのタヒチが市場の約95%の生産量を占めています。
各国の主な養殖地域は下記の通りです。
・フレンチポリネシア:タヒチ島、トゥアモトゥ諸島、ガンビエ諸島など
・日本 :鹿児島県奄美大島、沖縄県石垣島など
・フィジー :サブサブ湾など
・クック諸島 :マニヒキなど
<あこや真珠・バロックパールの産地>
あこや真珠の産地は、日本を中心に海外では中国、ベトナム、そしてUAE(アラブ首長
国連邦)で養殖されています。1893年に御木本幸吉氏が三重県伊勢志摩にて世界で初めて
半円貝付きの養殖真珠を生みだして以来、日本があこや真珠の唯一の養殖産地として世界
的に有名でしたが、近年では日本と比較すれば少量ですが海外でも養殖されています。
母貝となるあこや貝は、他種と同様に暖かく穏やかな海域を好みます。三重県の伊勢志
摩はリアス式海岸として有名で、海岸の入江は山々に囲まれ、自然の防波堤になっている
環境のため、一年を通じて温暖なため、養殖に適した環境です。
真珠のサイズを産地別に比較すると、日本は3mm~10mm程のアコヤ真珠が取れますが
、中国やベトナムは7mm以下の真珠が多くとれます。UAEでは5mm~6mmの小粒な真珠が
メインとされています。
各国の主な養殖地域は下記の通りです。
・日本 :三重県・伊勢志摩、愛媛県・宇和島周辺、長崎県・壱岐や長崎市周辺など
・中国 :北海、北部湾など
・ベトナム:ハロン湾など
・UAE :アブダビ、ラアス・アル=ハイマなど
<淡水真珠・バロックパールの産地>
淡水真珠の産地は、中国を中心に、少量ですがアメリカや日本でも養殖されています。
当初は日本国内での養殖が高いシェアを占めていましたが漁場環境の悪化に伴い減少し、
現在では流通するほとんどの淡水真珠が中国で養殖されています。
中国で育まれる淡水真珠は当初カラス貝と呼ばれる母貝から採られていましたが、1990
年代頃より母貝がヒレイケチョウ貝に変わってから品質がとても良くなり、且つ価格も安
いため市場シェアを拡大しています。一方、アメリカは養殖も少量されていますが、天然
の淡水真珠が取れることで有名です。大変な高級品ですが、アメリカ産の天然淡水真珠は
、形がユニークでフェザーと呼ばれる羽型など、細長い形状のバロックパールが多く採取
されます。
各国の主な養殖地域は下記の通りです。
・中国 :江蘇省、浙江省、湖南省、安徽省、江西省など
・アメリカ:テネシー州、ケンタッキー州、アラバマ州など
・日本 :滋賀県・琵琶湖など
・バロックパール・天然と養殖の違い
天然真珠と養殖真珠の違いは、人が関与して真珠が形成されたか否かです。
養殖真珠は、人の手により母貝に核やピースを入れて真珠が育まれます。その核は丸い球
体のため、取れる真珠もほぼ丸い形をしています。しかし、天然真珠は、人が関与せず貝
の中で自然に形成されるため、有機的で変形している場合が多いです。
一方で、変形している真珠の総称であるバロックパールも変形していますが、天然真珠
であるケースは稀で、その大半が養殖で育まれた真珠です。天然バロックパールは大変稀
で、現在流通しているバロックパールのほとんどが養殖真珠です。
天然も養殖も、どちらも本物の真珠であることは言うまでもありませんが、そもそも天
然には、どのような種類があるのでしょうか。
-天然真珠とは-
天然真珠とは、自然に真珠貝の中で偶然形成された真珠のことです。真珠というとラウ
ンド(球体)というイメージがありますが、天然真珠は不定形なバロックパールが多く、
何万個という貝の中から一粒でてくるか、という大変希少なものです。大半の養殖真珠の
ように真珠内に核がなく、真珠層のみで形成されています。
天然真珠の歴史は古く、数千年に及びます。古代ローマの博物学者、プリニウスの言葉
をかりると、“自然のままで、その完璧な美しさを誇る真珠は、人類が最初に出会った宝石
である”と称されるほどです。
現在では、アンティークの天然真珠がオークションなどで出品するほか、少量ですが下
記の天然真珠が流通しています。
-代表的な天然真珠の種類-
・コンクパール:ピンク、オレンジ、ホワイト系の色で、巻貝のピンク貝から採れる真珠です。
・アバロニパール:グリーン、ブルー系の色で、片貝のアワビ貝から採れる真珠です。
・淡水真珠フェザー:ホワイト系の色で、形が羽に似た形の、二枚貝のカワシンジュ貝やカワボタン貝から採れる真珠です。アメリカが主な産地で、フェザーという名前のほか、エンジェルウイング(天使の羽)と呼ばれることもある。
・メロパール:ベージュ、オレンジ系の色で、巻貝のハルカゼヤシ貝から採れる真珠です。